ちびこの娘、あずきのお話し
桜吹雪の舞い散る中、ちびこの産んだ子猫たちは、
それぞれの道を歩み始めたようでした。
近所のワンコに寄り添い、一緒にまんまをいただく子、
向こうの田んぼまで、冒険に出かける子、
一階の住人さんから、名前とまんまをもらえるようになった子。
そしてこの子、
ねちゃんがお仕事から帰ってくると、
階段の隙間からキリッと見つめてきて、ジーっと視線をそらさない。
兄弟姉妹の誰よりも、一回り小さくて、
誰よりも意思の強そうな顔立ちでした。
もともと人なれしてない、ちびこの子。
近寄ると逃げるし、警戒心がなかなか解けないので、
ねちゃんは保護をあきらめかけてるようでした。
それがある日、玄関の戸を開けるとスグ目の前に。
ふぃと怯むが、逃げない。
ドアを半開きにしていると、そーっと、探検に入ってきました。
スンスンスン。
懐かしいかあちゃんとおばちゃんたちのニホヒがする!
スンスンスン。
さらに一歩、また一歩。
先住ニャン達が、お脱走したらいけないからにゃ、
仕切り越しに、ご対面。
「ちびかあちゃん!ニャニャニャっ!」
そらから一週間。
ちびこの子は、玄関たたきから廊下まで、
外と中を自由に出たり入ったり。
先に、ねちゃんの館の住人になった猫ちゃんたちは、
予防接種と虫下しの治療中だから、おタッチはできないけれど、
遠目にそーっと、お話ししてたと思うよ。
そして、ねちゃんもずーっと話しかけてました。
「お外の自由か、おうちの安心か、自分で選んでね」って。
やがてその子は、あずき、と名付けられ、
扉を閉めても出たがらなくなり、
ねちゃんの首回りに、でろ~んとマフラーのように巻き付いて、
一緒に眠るようになりました。
2010年4月22日のことでした。