ちびこの娘、あずきのお話し

f:id:Byautaro:20200706162749j:plain

かあちゃん、いますか?

桜吹雪の舞い散る中、ちびこの産んだ子猫たちは、

それぞれの道を歩み始めたようでした。

近所のワンコに寄り添い、一緒にまんまをいただく子、

向こうの田んぼまで、冒険に出かける子、

一階の住人さんから、名前とまんまをもらえるようになった子。

そしてこの子、

ねちゃんがお仕事から帰ってくると、

階段の隙間からキリッと見つめてきて、ジーっと視線をそらさない。

兄弟姉妹の誰よりも、一回り小さくて、

誰よりも意思の強そうな顔立ちでした。

もともと人なれしてない、ちびこの子。

近寄ると逃げるし、警戒心がなかなか解けないので、

ねちゃんは保護をあきらめかけてるようでした。

それがある日、玄関の戸を開けるとスグ目の前に。

ふぃと怯むが、逃げない。

ドアを半開きにしていると、そーっと、探検に入ってきました。

スンスンスン。

懐かしいかあちゃんとおばちゃんたちのニホヒがする!

スンスンスン。

さらに一歩、また一歩。

先住ニャン達が、お脱走したらいけないからにゃ、

仕切り越しに、ご対面。

「ちびかあちゃん!ニャニャニャっ!」

 

f:id:Byautaro:20200709141830j:plain

ちびこの子たち

そらから一週間。

ちびこの子は、玄関たたきから廊下まで、

外と中を自由に出たり入ったり。

先に、ねちゃんの館の住人になった猫ちゃんたちは、

予防接種と虫下しの治療中だから、おタッチはできないけれど、

遠目にそーっと、お話ししてたと思うよ。

そして、ねちゃんもずーっと話しかけてました。

「お外の自由か、おうちの安心か、自分で選んでね」って。

 

やがてその子は、あずき、と名付けられ、

扉を閉めても出たがらなくなり、

ねちゃんの首回りに、でろ~んとマフラーのように巻き付いて、

一緒に眠るようになりました。

2010年4月22日のことでした。

f:id:Byautaro:20200709155305j:plain

避妊手術後の、あずきを介護するしまこ

 

みんなの妹、ヤンママちびこのお話し

f:id:Byautaro:20200625155558j:plain

松江市 恵曇神社の桜

たぶん、グレコお姉さんの娘さんが、しまことくろこ。

くろこの娘さんが、ちびこになるのかにゃ。

みんなより、体もお顔も一回り小さく、

とんがったおめめで、シャーシャーゆってる、

気の荒い女の子でした。

ちいちゃな体で、その前の年に、

初めて出産したみたい。

ネズミのように小さな仔猫が、

四にゃん、おちっち飲んでました。

みんなちびこにそっくりでした。

 

やがて離乳の時期になり、仔猫たちはカリポリ食べれるようになりました。

アパート階段下にある、まんま場は、

出る量が少しずつ減ってっるご様子。

ねちゃんが、保護のために2階のまんま場を開設したからにゃ。

 

ちびこは、肝っ玉母ちゃんで、

子猫にゴハンを食べさせるため、

いっちょけんめいチビにゃん誘って、

2階にあるまんま場まで階段を上ってってました。

ちいちゃな体で、

いっちょけんめい、いっちょけんめい、

チビッツをふり返りふり返り、

2階のまんま場を教えていました。

そうやって親から子へ、生きる術を伝えてゆくんだね。

子猫は子猫で、必死で学んでゆきました。

階段一段一段が、それはもう、岩山のように難儀な高さ。

アパートの誰かが帰ってくるたびに、

足音でビックリした子猫達は、

まろびながら、すべりながら、

階段から転げ落ちてゆきました。

とっても怖かったと思うよ。

子猫から見たら、ニンゲンは怪獣のように大きく見えるからね。

中には足がすくんじゃって、

角でぷるぷる震えるばかりの子猫もいました。

そんなチビッツ達を、

ちびこは全力で守り育ててました。

でもね、

グレコおばあ様、しまこ叔母さん、くろこ母さん、

次々いなくなっちゃったでしょ?

ちびこは、とっても不安になりました。

どこに行ったかはわかってたので、

そーっと、会いに行ってましたにゃ。

そして教えられました。

『シャーシャーゆってないで、ねちゃんに、ちゃんとご挨拶なさい』

そして、そーっと、鳴いてみました。

『まんまいつもありがとう、ねちゃん・・・』

キュキュキュィっ?

ちびこの鳴き声は、こんな感じ。

小鳥ちゃんの鳴き声のようでした。

f:id:Byautaro:20200625180246j:plain

ちびこの大好きな、くろこ

 そうやって、ねちゃんの館に入ってゆきました。

 2010年4月の2日の事でした。

しまこと一緒におうちに来た、くろこのお話し

f:id:Byautaro:20200625100812j:plain

霧の中の、くろこ

しまこちゃんと同じ日に、くろこちゃんも、ねちゃんの館に入りました。

すんなり素直に、住人ににゃりました。

 

それまで何度か、扉の前でニャーニャーまんまをねだったり、

下駄箱までは、出たり入ったりしてたから、

それまで何度か、扉を閉められたり、

廊下を探検してたから、

何度も何度も、ねちゃんのお話し、よーく聞いてたから、

もうね、お外には出ないよ、ねちゃんとずっと一緒だよって、

覚悟を決めて入ったから。

 

他家の、にゃ~とぴあ、にもらわれてった、グレコちゃんもそうですが、

しまこ、くろこ、おねーさん方はみんな、ご懐妊でした。

f:id:Byautaro:20200625114700j:plain

おねだりまんまの玄関

去年の春、ご近所界隈は子猫ラッシュで、

とても賑やかで楽しかったそうです。

だけどまだまだ、

春の宵の肌寒い中、菜種梅雨のどしゃぶりの中、

救いきれない、小さな命が、

ぽつりぽつりと消えていくのを目の当たりにして、

ただただ可愛くて、無責任にまんまを出してた “ねちゃん”は、猛反省!

まんまを出しながら、なでなでしながら、

ずーっと説得を続けてました。

寝床まんまのある、ねちゃんの館へ、おいでなさいって。

そうやってワシらは、

ねちゃんの館の住人に、なってゆきました。

f:id:Byautaro:20200625154653j:plain

安心しきって眠る、くろこ

 

 

 

 

 

グレコの妹、しまぐれこ、のお話し。

 

f:id:Byautaro:20200622201232j:plain

 カモ~ん。仲間を呼んでいる

グレコお姉さんが、他家に引き取られ、

ワシらもちょっぴりさみしくなりました。

一番の仲良し、しまぐれこちゃんも、グレコお姉さんに会いたかったのかにゃ、

“ねちゃんの館” の階段下から、あまし動かなくなりました。

まだまだ寒い二月のころ、ねちゃんは、こっそり毛布を持ってきてくれました。

そして、ワシらに言いました。

「ねちゃんちの子になる?」

f:id:Byautaro:20200624161412j:plain

暖かい寝床と、たっぷりのまんま

そーなんです。ねちゃんは、ずーっと考えてたらしい。

ワシらの保護。

だけんど、うしお君は、

ニンゲンとポカポカ寝るよりは、自由なお外がいいって、

ねちゃんにゆったんだって。

だから、ねちゃんは、ワシらの意思に任せるって。

自由なお外か、まんまと寝床を約束された、ねちゃんの館か。

どっちか好きな方を選びなさいって。

両方はないよって。

f:id:Byautaro:20200624180740j:plain

先住民の密なお姉さま方

そーだにゃ。

両方は、ないよ。

そんな都合のいいところなんて、ないよ。

ワシが、のんびり考えてるうち、

しまぐれこ、改め、しまこちゃんと、

仲良しの、くろこちゃんは、

同じ日に “ねちゃんの館” の住人になりました。

お外で、まんまを食べさせてもらいはじめてから、

一年と四か月、たってました。

なごり雪の降った、その年の春はたいそう寒くて、

ここ出雲では、三月九日、なんと大雪!

2010年、弥生三月おひな様。三月二十日

春分の日の出来事でした。 

f:id:Byautaro:20200625100054j:plain

おうちがゴキゲンの、しまこ

 

ギリシャなロシアンブルー、グレコのお話し。

f:id:Byautaro:20200611123249j:plain

空へと続く道


濃い灰色の、キレイなお姉さんがいました。

ワシらの近所の、マドンナにゃん。

たおやかで、やさしくて、ニンゲンからもとっても可愛がられる、

それはそれは美しいネコさまにゃ。

しなやかな足取りで、よく草むらをお散歩されてました。

そう遠くには行かないはずなのに、

そのお姉さん、時々ふっと、いなくなるんだにゃ。

しばらくして帰ってくると、いつもいい匂いがしてました、鰹節の香り。

そのうち、そのお姉さんの姉妹にゃん達も、一緒にお散歩でかけるようになりました。

どうやらどこかに、いいまんま場を見つけたらしい。

ワシは聞きました。

『ついて行っても、いいですにゃ?』

にっこり笑ったお姉さんは、

「どうぞ、あたしの後を、ついておいでなさい」

そーゆってくれました。

「あたしはそこでは、グレコ、って呼ばれてて、大家にゃんって方がいます」

?大家にゃん???

「上からこちらをジーっと見ててね、ねちゃんの館の大家さんみたい」

?ねちゃんの館??

なにやら、元締めみたいなボスにゃんさんがいるご様子。

ワシはこわごわ、そーっとついてゆきました。

もしかしてそこが、おじぃにゃんが語ってた、桃源郷

にゃ~とぴあ?なのかにゃ?

f:id:Byautaro:20200611124727j:plain

光の中の、大家のはいび

グレコお姉さんと、その姉妹にゃんさん達は、

たいそううれしそうに、たのしそうに、

ねちゃんの館へむかってゆきました。

ワシ、まだこわくて、遠くからそーっと、様子を見るばかり。

田んぼの中の、ポツンと一軒家みたいな、小さなアパート。

ホントに、こんなところに、まんま場があるのかなぁ?

するとすぐ、

二階のカーテンが、ふらりと揺れて、

女のひとが階段を下りてきました。

その手には、まんま袋が!

きっと、この人が  “ねちゃん”  さんだにゃ!!

にゃにゃーん!

カリポリカリポリんまんまんまんま♪

階段裏にみんな集合して、おまんまタイムのご様子!

勇気を出して、一歩、また一歩、そろ~りそろ~り、

近寄って・・・くんくんくん、おいしそうなまんまのニホヒをかいだのにゃ。

やさしいグレコお姉さんが、場所をゆずってくれて、

ワシを  “ねちゃん”  に「この子もヨロシクね」と紹介してくれました。

<m(__)m>初めまして、ねちゃんさん、「ぅびゃ!」

その日からワシは、びゃう太郎、と名乗ることになりました。

まいにちまいにち、ねちゃんの館の、階段下までご出勤しましたにゃ。

グレコお姉さん、しまぐれこちゃん、くろこちゃん、ちびこちゃん、

うしお君。

やがて、グレコお姉さんは、近所のネコ好きさんに引き取られてゆきました。

あたたかい寝床と、たくさんの愛情と、

まんまがたらふく食べられる、にゃ~とぴあ別館へ。

 

おうちで、14ニャンズになる前の、きっかけ。猫にとってのユートピアとは。

f:id:Byautaro:20200608152804j:plain

わし、びゃう太郎です

ねちゃんは、海の側のアパートで、

はいび姐さん、パトラちゃん、りんごちゃん、ちのちゃん、

4ニャンズと、仲良く楽しく、暮らしてました。

わし、そのころ、どっかの道端で生まれとったと思いますにゃ。

きょうだいは、何にゃんいたのかなぁ・・・

おとうにゃん、おかあにゃん、タヌおばさん、タヌキおやじ、

仲間がいっぱい、いましたにゃ。

お互い、ちょびっと近寄ってみたり、シャーってゆってみたり、

寒い日はくっついてみたり。

いつもお腹を空かして、

ドラにゃんこさんやら、しょいかごネコさん、

おとなニャンのつぶやきを、うとうとしながら聞いてました。

この地上のどこかに、

たらふくゴハンが食べられる、にゃ~とぴあ、

と呼ばれる国がある…

そこには、ねこサライのおばさんとゆー女王様がいて、

にこにこ、そーっと近寄ってきては、

おまんまどうぞって、パラリと置いてくんだって。

じーっ。。。

みんなが、おまんま食べてるの見届けたら、

サッといなくなっちゃうらしい。

で、ちょいと勇気を出して、そのおばさんの後をつけていくと、

・・・・・

もしかしてそこが、にゃ~とぴあ、なのかもしれないにゃあ。

なぜならその猫たちは、

みるみる元気になっていって、

やがて道端から姿を消していく。

f:id:Byautaro:20200609151704j:plain

この人についてゆく

そんなはなしを、よく聞くようににゃりました。

2009年の、初夏のころでした。

ねコミュニケーションが苦手な、永遠の末っ子、ちの。

f:id:Byautaro:20200518193800j:plain

シーザー改め、ちの。

2006年の秋、ぽち君と  “ねちゃん”  は、

松江市鹿島町の海辺をドライブしてました。

このあたりは、島根原子力発電所があったり、

大芦海岸とゆう、絶景スポットがあったり、

とにかく海がキレイな所です。

神楽の佐陀神能が舞われる、佐太神社もあります 

古代史が好きな “ねちゃん”  が食いつきそうな場所です。

ま、“ねちゃん”  本体のお話は、後々じっくり語りますにゃ。

 

さて、恵曇漁港に車を止めようと、スペースを探していたら、

ん?

目の前に、下痢うんちょく垂らしながらヨタヨタと歩く、

白い物体が。

・・・!?子猫?

どかないにゃ、車の前から、どかないにゃ、

つまんでポイ!しないと、ひいてしまいますにゃ。

しかたなく車から降り、

安全な所に、ポイ、しようとつまみ上げたら、

その子猫ちゃん、

ひしっ「ねちゃ~ん」ガシっ!

いっちょうらの、おでかけオシャレ服に、

ベタっと張り付いて来ましたにゃ、

ゆるゆるうんちょく擦り付けながら。

ちょこんと肩にのっかったまま、すやぁ...ゴロゴロゆってきたそーです。

近くにいるかと、親兄弟を探しましたが、

漁港のおっちゃんも、この子一匹だけ数日前からウロウロしてて、

親猫も見かけたことがない、と。

んー・・・

荒波の護岸もすぐそこだし、もうすぐ寒い季節が来るし、

なによりもう、夜は冷え込むし。

すでに肩で寝ちゃったし。

安心しきって眠り込む、会ったばかりの子猫ちゃん。

そりゃ置いてくわけにはいきませんにゃ。

2006年10月15日の出来事でした。

険しい顔つきで男の子だと思ったし、

丈夫に育ってほしかったので、

シーザー、と命名

のちに、こまちんこは生えてず、

おきんたまもふも 、ふくらんでこなかったので、

女の子と判明。

ちっちちのちの、ちの、と改名しました。

f:id:Byautaro:20200520163713j:plain

海に沈む夕日